ポケモンレジェンズアルセウスに登場する木製蒸気モンスターボールを制作しました! 木材加工やレジン複製など各工程をわかりやすい写真とともに詳しく解説いたします。動画もあります!
はじめに
ごきげんよう、〈犬小屋軒〉POCHIです!
突然ですがわたくし、ぼんぐり拾いました~。しかも半分になってます(最初から半分になってたんです、便利だね~)。

アマゾンへいやで木をゆすったら半球ずつ落ちてきました。他の実はホシガリスに持ってかれました。
今回は、2022年初頭に発売するゲーム『ポケモンレジェンズアルセウス』に登場する、木製蒸気モンスターボールをつくってみたいと思います。なお、製作にあたっては一個人が勝手に想像・考察したものを元に進めております。どうぞご理解のうえご覧くださいませ。
採寸と設計
さて。このぼんぐりですが、直径74.8mmです。一般的なモンスターボールのサイズは約80mmほどと言われているので…まあ、だいたこんなもんでしょう。

ノギスという工具。これがあれば、定規の当てづらいあらゆるものを計測できます。
最初は紙に何となく描いて、ちゃんとつくれそうか確認します。よし、いけそうなので、実際につくってみましょう!

初期段階の設計は今でも手描き。ちょっとしたアイディアを書き込むのが趣味なのです。
設計図ですが、公式サイトの画像を元に、パソコン上でサイズをトレースしながら描画していきます。公式画像が斜めアングルなので、バランスを整えるのがちょっと大変でした。

イラレを使った設計画面。フィギュアなんかもそうですが、一部だけ原寸より大きくした方がカッコよかったりしますよね。今回の反省。
ちなみにですが…。当初は3Dデータをつくり、3Dプリンタで出力しようかとも思っていたんですよ。でも、今回は全て手作業でやってみたいという気持ちがあり、平面の設計図を起こし、一つひとつパーツをつくっていこうということにしました。
穴あけ
ここから実際の作業スタートです。
まず、ボール本体の厚みを印していきます。そして、不要な部分を全部くり抜きます!

半球の面にくり抜き線を記入。既に不穏な空気が漂っている……
今回は、空ける穴の深さと径の対応表をつくってみました。それを元に、自由錐という刃物で段階的に削っていこうと考えておりまして。

つくりながら、頭おかしいなコイツって思いました。
で。この表を基に、ボール盤という機械を使って穴を空けていこうと思います。ボール盤というのは、可動部にキリを取り付けると、キリが垂直に下りてきて安定した穴を空けることができるという超便利機械。
それを使って垂直のキレイな穴を大量に空け……るはずでしたが。その、結果から言うと、使用不可でした!
盤を昇降させるハンドルがへし折れていました 。やべーです。

古≪いにしえ≫の機械を信用してはなりません。
ということで! 気持ちを切り替えて全力手作業タイム突入!
作業用台座の制作
とにかく、手を動かしましょう。まずは、半球をくり抜く際に滑ったりズレたりしないように台座をつくります。滑り止めシートなんかを噛ませて、いい感じにできました。

台座完成の図。まだ何も始まってはいないのだ。
水平を確認して、いよいよ削っていきます。先ほどの対応表を見ながら穴を空けていくんですけど……

しょっぱなにやっちまった。ブレーキ痕もない、完全なる貫通だ。
さっそく穴開いちゃいましたね~笑
まあ、こんなこともあるさ! どんどんいきます。
手順としては、コンパスで2~3mm刻みの円を描き、それに対応する深さの穴を空けていきます。5mmくらいのキリで空けてから、12mmのキリでゴリゴリ穴を広げていきます。
キリにマスキングテープなどで必要な深さをマークしておくと、貫通などしなくて済みますよ!

コンパスで円をいっぱい描くよ♪ 本当は中心に穴を空ける前にしないといけなかったよ♪

穴をいっぱい開けるよ♪ まるで蜂の巣♪

隙間にはもっと細いキリをお見舞いするよ♪ これを延々と繰り返すよ♪♪
もっと細いキリで隙間を攻めて、スカスカになった辺りで、ヤスリをかけ強引に彫り進めます。
ガンテツさんならもっとスマートにやるでしょうけど……とはいえ、こんなの一人で、しかも一日で仕上がてるとか、ガンテツ師匠、達人過ぎる……。

鉄鋼用ヤスリビットと木工用ヤスリビットを使い、力尽くで削って削ってを繰り返しました。
ノミや彫刻刀を駆使し、無理やり何とか削ることができました。これをもう一個やりま~す……。

木をくり抜くにはとてつもない根性か、いい専用工具が必要でしょう。
そういえば、ぼんぐりはとても固く、熟す前の実はポケモンたちですら食用にしないと言います。ガンテツ師匠、いったいどんな工具使ってるんでしょうねぇ。
金属パーツ原型
お次は、金属パーツですね。今回は手でパテを捏ね、造形し、それをレジン複製していくことにしました。
というのも、本物はここのパーツ、恐らく鋳鉄製です。いわゆる鋳物ですね。一体成型感を出すためと、せっかく旧時代のカラクリをつくるので、職人の手仕事に少しでも近づけられればと思い、この方法を取りました。

エポキシパテをこねています。プラモ用の軽量タイプを使いました。
ここもとにかく、地道作業です。そういえば、ぼんぐりボールのデザインって可愛いですよね。あれ、おじいちゃんが一人で塗ってるんですよ……?
中央パーツ制作
パテが混ざったら、クッキングシートなどに挟んで延ばします。今回は厚みにもこだわりたかったので、必要な厚みのアクリル板を切り出し、ガイドにしました(↓画像の紺色のやつ)。
平らに延ばしたパテは固まってからシートをから剝がし、コンパスカッターで抜いていきます。

待ちきれなくて、とりあえずパテたちを重ねてみたところ。お~それっぽい!
正面の謎のぽつぽつもつくっていきます。念のため多めにつくっておくのです。

ハナ〇ソみたいなこのパーツを、20個くらいつくりました。
中央のパーツを半分にカットします。最終的に複製するので、パーツは半円分でよいというわけです。
そして、これらのパーツを合体!

ハナ〇ソを一粒ずつ、愛情を込めて溝に詰めます。
続いて、ボールを一周するベルト部分もつくっていきます。

ベルトも同じように延ばし、半分くらい固まった時点でカット&成形を行っています。
ベルトと中央パーツを合体させてから、もう一度パテ埋めをしていきます。ちなみに、溶きパテがなかったので車の補修用パテを使っています笑

パテで補修中。接続部は特に、継ぎ目が見えないよう丁寧に埋めます。
ということで、パーツその①完成で~す!

中央パーツ完成!大仕事を終えた気分……気のせいなんだけどね。
煙突パーツ制作
今度はパーツその②頭頂部の煙突パーツをつくりましょう。
さっきと同じ工程でつくったパテシートをコンパスカッターで抜き、さらに電動ドリルで中心に穴を開けます。初めは細いキリで開け、少しずつ穴を大きくしていきます。
途中から結構ズレてしまいました。まあ、削って補正するのでいいです!

いきなり大きなドリルでやると、パーツが欠けたりケガをすることも。
このパーツ。煙突と勝手に呼んでますが、本当にそうななんだろうか? 正直まだ分かりません。今回は外側メインでやっていますが、いずれ時間ができたら内部のギミックも想像してつくってみようと思っています。
モンスターボールの重量について…
ちょっと余談なんですが、モンスターボールの重さって、どれくらいだかご存知ですか? 実はこれ、一個300gもあるんですって。
硬式野球のボールとモンスターボールって、まあまあ同じくらいのサイズなんですが、重さは二倍。モンスターボールは野球のボールの二倍の重さなんです!
サトシさん、こんなの25年投げ続けてるんですから、メジャーリーガー真っ青ですよ。

サトシさんの強肩を思いながら、無心にパーツを削るぜ!!
あ、↑の画像では、さっきの煙突パーツに段差をつけるためもう一つパーツを重ね、そしてさらに、煙突部分の支柱みたいなパーツ×4を削っているところです。このパーツですが、曲面に沿わせるためかなり微調整が必要でした。
これをくっつけて、原型づくり終了!

原型づくりはこれで終了。ひいい……
金属パーツのレジン複製
よし。じゃあ原型が完成したところで、型取りをしていきます。
シリコンの流し込み
まず枠ですが、家にあったレゴブロックを使います。ちなみに底には、粘着シートを使っています。原型がきちんとくっついて、取り外しも楽です。

おうちにあった娘氏のものを拝借……許せ、娘(笑)
煙突部分も一緒にセットして、離型剤を吹きます。

離型剤を噴いています。レジンをやる方はぜひ、よい離型剤を使ってくださいね。型の寿命も変わってきます。
続いて、シリコンを混ぜ合わせます。AとBの液体を、同量をきちんと混ぜることで初めて硬化するものです。しかも硬化開始が5分以内と短期決戦なので、事前に準備を完了させておきましょうね。

シリコンは混ぜた瞬間から硬化のカウントダウンが開始。ジョジョみたいな展開に一人で焦る。
あと、気温も25℃以下でやらないと、作業しているうちにどんどん固まり、気泡が抜けません。作業する場合は、説明書をよく読んで涼しいところでトライしてください!

時間は残り10秒……『リセット』された!!お前をシリコンに沈める時間がな
シリコンからの離型
翌日! 硬めの寒天くらいになったシリコンさん。お~いい感じ!

レゴで型をつくることの最大のメリットは、取り外しが楽なこと。ブロックをポロポロ外していけば、勝手に離型できます。
シートからちょっと原型が浮いてしまったので、カッターで切れ目を入れて取り出していきます。原型、ちょっと割れちゃいましたが、仕方ない。煙突もいい感じ。
どうですか、結構きれいに取れましたかね。

細かいところまで複製されていると、なかなかうれしい☆
レジン複製
ということで、いよいよレジン複製に移ります。再び離型剤を吹き、レジン液をスポイトで流し込んでいきます。

隙間までしっかり、さっきと同じ離型剤を噴きます。そのあとにレジン注入~
どうでもいいんですが、ゲーム内で買うと、このモンスターボール100円なんですよ。当時の物価で言えばかなり高価なんでしょうけど、これ一個ずつ手づくりですよきっと。職人さん泣いちゃいますよね。じゃあ逆に、蒸気機関部分は原価いくらなんでしょうね? 今すごい気になってます。
あ、レジンを日光に当てまーす。

うちのクーパー氏「まさか、レジンを硬化させるのに一役買うことになるとはな。まったく、光栄だよ……」
おまけ・竹カゴ編み
オプション作業、竹ひご引き。これは何の作業かというと、ボール内のポケモンが安心して収まってくれるように、竹のカゴ的なものをつくろうと思いまして。

カゴ編み職人さんの動画を見て勉強しました。こういうのばっかり得意になる。
想像ですが、もしボール内に超小型の蒸気機関を搭載した場合、金属製のパーツなどが張り巡らされるのではないかと思います。蒸気で動いているということは、銅管なんかは100℃以上になっているはずですよね。熱いじゃん、可哀相じゃん! ってことで、とりあえずカゴくらいは編んであげようと思った次第です。こんな感じです。

竹カゴはエゴなのか? 本物の内側が公開される日を心待ちにしております。
レジンの修正・補修

離型する瞬間の、何とも言えない快感はクセになりますゾ
そうこうしているうちに、レジンが固まりました! そっと取り出してみると…おーおーイイカンジ! とはいえ、細部には欠けがある様子ですね。バリを取り形を整え、補修する作業に移りましょう。さっきつくったぽつぽつの残りがここで役に立ちます。

結局、シリコン型に気泡ができてしまったので、今後レジン複製するたびにこの工程が付きまとう。
二つを並べてみましょう。おあ~、中心が若干楕円に見えますが……仕方ない! 次行きましょう!
モンスターボールの底にある、謎のパーツをつくっていきます。とりあえず緑でつくりましたが、もし「たまいし」がここに入るなら赤になるはずなんですよね。
もし公式で何か明らかになれば、このボールもアップデートしたいと思います。

蓄光塗料と緑レジンを混ぜて半球の型に流します。ボールの中央部から緑の光が出ているはずなんじゃ……!
塗装
本体・上
本体のカラーリングをします。紙ヤスリで表面を整え、木部用シーラーを掛けたのち、色を5回ほど重ね塗りしました。

塗装の光景。半球のなかに新聞を詰め、そこに割りばしを刺しています。
本体・下
下半分は塗装せず、蜜ロウワックスで磨きます。木がもつ本来の色味を活かして、丁寧に仕上げました。いいツヤですね~。

木のままでも、ワックスを塗ることで自然な色とツヤがでます。
金属パーツ
金属パーツの塗装は、ターナーの〈IRON PAINT(アイアンペイント)〉という塗料を使いました。トントン叩くように色を載せていくと、鋳物のようなマットな質感が出ていい感じです。
あ、下地にはプラ用のプライマーを噴いています。塗料の剝がれ防止にもなりますよ。

アイアンペイント、いい塗料です。
残るは留め具パーツです。直接手で触るところなので、一応本物の金属を使います。といってもアルミなので、さくさくっと形を抜き、研磨して形を整えれば完成です。これも塗装します。

ジュース缶のプルタブみたいな形。出っ張りは、瞬間接着剤を垂らしてそれっぽくしました。
組み立て
組み立て~!
接着剤で慎重にパーツを取り付けていきます。本体の上半分、間違って真ん中に穴を貫通させた、と言いましたが、今思うと構造的に必要な穴だったんじゃないかと思ってます。まあ、計算通りなんですけどね!

パーツの取り付け完了。よーし、おれの指示通り!!(どーん)
丁番つけ
そして、丁番を付けます。パーツの厚みなどを考慮して、本体とパーツのベルト部分を一部削り、ピッタリ収まるようにしてみました。

丁番取り付け用のビス穴を開けるつもりが、またしてもウッカリ貫通していたなんて……誰にも言えない。
最後に留め具用の穴を空け、パーツをねじ込んだら……完成です!!

中央パーツの側面にピンバイスで穴を開け、そこにアルミパーツを差し込んでいます。
まとめ
前回と今回で、木製蒸気モンスターボールの動画をお届けしました。スチームパンク的な視点から『ポケモンレジェンズアルセウス』を考察し、それを元にモンスターボールを制作してきました。いかがでしたでしょうか?
制作中にもお話ししましたが、今回はボールの外側をメインにつくりました。まだ公式の情報も少なく、とりあえずビジュアルを再現してみたという感じです。

木製蒸気モンスターボール完成! 蒸気ぷしゅーーー
しかし今後は、考察を広げて内側の製作もしていきたいと思っています。蒸気機関を形作るボイラーやパイプ、冷却器、そしてもちろん歯車も! いろいろ詰め込んで、もっとスチームパンクな感じを出せたら楽しいですよね。そのときはまた動画をつくりますので、ご覧頂けると嬉しいです。
最後までお付き合いくださり、まことにありがとうございます。それでは、旅の幸運を…!

娘氏にレゴを返し、代わりにモンスターボールを献上しました。娘氏、喜んで投げました。
動画はこちらから
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