スチームパンクな木製宝箱をつくる作業工程解説、まずは木部加工について各工程をわかりやすい写真とともに詳しく解説いたします。動画もあります!
宝箱のベースとなる木材部分を制作します。木部の加工は蒸気機関を支える上でも非常に重要かつ有用な技術です。スチームパンカーなら、木の扱いを心得ておいて損はありません。きっと、冒険の途中で役立つことでしょう。
設計と採寸

アーチ型の木製宝箱を作ることに決定。ロマンの形。
宝箱といえば「アーチ型の蓋」のイメージ!ということで、少し手間はかかりますが、アーチ型の宝箱をつくっていこうと思います。マンガでよく見るあの宝箱の形です。お好みにもよりますが、これが一番ロマンの形ですよね!?
また、ここも個人の好みではありますが底板は外から見えない方がカッコイイので内側に納めます。※採寸やカットがシビアになるので、アバウトに作りたい方は底板は下付けでも良いかと思います。
作りたいサイズで設計したあと、挟まれる方の板は内寸(完成品の内側から測るサイズ)を計算しておきましょう!

資材カット表。こんな感じで書くと一目瞭然でオススメです。
カットしたい木材は、形を揃えて一覧に書き出しておくと便利です。必要な枚数もしっかりメモしておけば、ミスも手間も減ります。
また、せっかくの木製で宝箱を作りますので、素材の木目の向きもこだわりたい大切なポイントです。予め木目の向きも決めておくと良いでしょう。だいたいで良いので、木目の向きも設計図に書き込んでより具体的にイメージを作っていきます。
今回は家に転がっていた端切れのカット板を使いましたが、ホームセンターなどで資材調達する場合は売り場でカットを頼むことも出来るお店があるかと思います。モノ作りが好きな方は、大きい板を買って、扱いやすい幅(100mm~200㎜など)にカットしてもらってストックしておくと便利です。
ちなみに、アーチ型の蓋部分の設計・採寸はちょっと面倒なので、後回しにしました。本体の木部カットを先に進めます!
線引き

カット線記入時には、必ずサイズの表記(紛らわしければパーツ名も)をしましょう!
木材に線を引きます。
今回はシャープペンシルで直に線を書き込みました。線はあとで消えるので、採寸した時点でサイズもしっかりと書いておきます。カットミスは死活問題になりかねません(笑)。ミスを防ぐためにも、線引きの作業は丁寧に!
カットに使う機材にもよりますが、カット時に必ず何mmかロスが出ます(基本は刃の厚み分)。カットする枚数が少ない場合は両端から線を書けば良いのですが、カット枚数が多い場合は、面倒でもその都度カット線を引き直した方が吉です。
自分の場合は、複数ある板材にそれぞれカット線を入れています。同じ幅の板が手元に複数枚あると、こういうときに便利ですよ。
線引きに使用する定規は4種類

必要に応じて道具を交換しましょう。似たアイテムでも得意とする作業が異なります。
今、主に使っている定規は4種類です。引きたい線に合わせて使い分けています。用途に合わせてツールを揃えることで作業がよりしやすくなりますよ。
- 細かい部分用のステン定規
- 下が見える透明定規
- 直角を出せる曲尺(かなじゃく)
- スケール(巻きじゃく)
採寸が済んだものにはチェック、もしくは正の字で枚数を正確に把握できるようにします。必要なら、木材本体に通し番号を振るのも手です。
木材カット
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丸ノコでカットしているところ。必要な部材が左側に出るようにセッティングすると◎
木材のカットに使用しているのは、「HiKOKI(ハイコーキ)」の卓上丸ノコです。
サクサク切れておすすめですが、卓上なので最大切断幅は120mmほどになります。ノコギリでも構いませんが、作業効率を考えるとやはり電動ノコは便利ですね。持っていて損ナシです。
木材に書き込んだカット線を参考に、採寸した自分を信じて、無心でカットを進めます…!
サンディング(研磨)
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電動サンダーさんには本当に頭上がらない。便利なのでレンタルでいいから一度試そう!
カットが終わったら、サンディング(研磨)の作業に入ります。使用機材は「RYOBI(リョービ)」のサンダーです。
この工程は圧倒的に電動の力を借りることをおすすめします。
実は自分も紙やすりで手作業でやっていたのです……が! 電動工具は偉大なり。使ってみたら作業時間が圧倒的大幅に短縮されました。もしかしたら、まずは何よりも最初に買うべき工具かもしれませんよ!(笑)
サンダーに限りませんが、費用対効果を事前に知りたい場合はホームセンターのレンタルを試してみるのも手です。カインズなどのホームセンターには、その場で工具を試用できるスペースがあったり、レンタルして自宅で使えるサービスもあります。
アーチ型の蓋の側面(半円)の採寸と線引き
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半円×2になるようスミ引きをします。木材がずれないよう、このあと捨て板に固定してから円を描きました。
いよいよアーチ部分に着手です……!
キレイな半円が欲しいので、先に板を半分にしてから円を抜きました。
というのも、そもそも円を切り出してから半円にカットするのは難しいからです。また、カット時に何mmか削れてしまうと、キレイな半円になりません。そのような理由から、ここでは二枚の板材を一時的にビスで留め、その上からコンパスで円を描くことにしました。
もちろん、設計時に半円の直径は出ていたので、それに足りる木材を用意してもOKです。
アーチ型の蓋の側面(半円)のカット
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卓上糸鋸はみなさん中学校などで使ったことがあるかも。大人になると、あんまり針折れなくなります。
半円を切っていきます。この工程では電動糸ノコを使用しました。細かいカットは、電動もしくは手動の糸ノコがマストですね。このあと、蓋のアーチ部分にはガッツリとサンディングしていくので切り口が多少ガタつく程度は問題ありません。ザクザク切ります。
※撮影時は真冬だったので、滑り止めにグローブをつけています。工具によっては巻き込まれて大事故につながる場合もありますので、要注意です!
アーチ形の桟(さん)を設計・採寸
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小学校で算数を諦めたド文系POCHI。それでも何とかなる。
アーチ形の側面部分になる半円カットが無事に終了したところで、一番の難所であるアーチの「桟(さん)」を作っていきます。
角度等の細かい計算はアバウトに、原寸で紙に書いて測れば設計・採寸出来ます!
というわけで、今回は11°の傾斜を両端につけた台形型の桟を8本切り出していきます。
アーチ形の桟(さん)をカット
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小さい部材をカットするときは、特に気を付けましょう。慣れてきた頃が一番危険……!
いきなり傾斜をつけてカットしても良いのですが、精度を優先してまずは長辺のサイズで直角カットします。全く同じサイズのカットをする場合は、お手本を上に重ねて着ると楽です。ただ、慣れないとお手本も削れてしまったりするので、善し悪しですかね。
無事に8本カット終了。
小さい部分は地味~に時間もかかるし、刃と手が近くて危険だし、少し(いやだいぶ?)神経を使います。作業が一段落したら休憩してくださいね。
角度をつけて木材をカットする
端材の試し切りで角度を調整する
いよいよ角度をつけて木材をカットします。その前に角度調整のための試し切りです。
機材に目盛りがついていても、隙間に挟まったオガクズや気温などの影響で精度は結構低かったりします。特に、細かい角度が必要なときは、とにかく端材を試し切りして何度も調整をします。ひたすらアナログ作業です。
やっとピッタリ!
このときは少し感動しました。そして深くため息をつきました(´▽`)
角度調整が出来たらいざ本番!
先ほどカットした木材をセッティングして、角度をつけていきます。ここもアナログで恐縮ですが、回っていない刃を何度も下ろしながら木材の角にピッタリ当たる場所を探っていきます。
右側の板は、同じサイズの部材を切るための定規の代わりになっています。また、幅がなく単体では支えきれない部材を押さえるためでもあります。
組み立て
アーチの桟から組み立てる
木材のカットが終わったら組み立てに入ります。
まずは桟の部分からです。片方の傾斜に木工用ボンドを塗っていきます。今回は直角など分かりやすい形ではないので、ボンドを多めに塗って、あとから動かして調整できる程度に留めます。
側面にもボンドを塗って、片側ずつ小クギで固定していきます。使用する小クギのサイズは木材の厚み×2くらいがベターです。この時点ではまだボンドも乾いていないので、指で押して位置を調整しながらクギ留めしていきます。
ちなみに、蓋が組み上がった際、桟の部分がスカスカしていますが問題ありません。
箱本体を組み立てる
続いて、本体を組み立てます。
アーチを組み立てた今、怖いものなどありません。どんどんいきます。
組み立てる前に、表にする面を決めておくと良いでしょう。塗装すると見えなくなるので、パーツごとに裏表の印をつけておくのもアリです。また、クギの位置を等間隔にすると見栄えがよくなる点もポイントです。そこまで厳密に測らなくてもいいので、パッと見でキレイな間隔を取ってください。
木工用ボンドは学校の工作で使うイメージをもつ人も多いかとおもいますが、木材と木材を接着させる力はかなり本格的です。どちらかというと、クギはボンドが固まるまでの「押さえ」くらいの感覚です。クギを使いたくない人はボンドだけでも充分かもしれませんね。
もし、ボンドのみで接着する場合は、ボンドは圧着が前提になりますのでクランプや重しを利用して圧を充分にかけてください。
箱組みが終了しました。
若干、上下が歪んでしまいましたが…(笑)。これも「味」です。
仕上げのサンディング
箱全体をサンディング(研磨)していきます。先ほど平面にかけたのは内側になる面を滑らかにするのが目的でした。こちらの仕上げの工程は、全体をまんべんなくサンディングすることで凹凸を目立たなくして、手触りをよくするために行います。
サンダーを掛ける際、地面に置いた木材に掛けてもいいですし、サンダーを脚に挟んで掛けてもいいかと思います。力を入れやすいのでオススメです。
このサンダーは市販の紙やすりを切って使うタイプのものです。やすりの目は、「#80」「#100」「#150」の三段階を使っています。
細かい部分は手作業でサンディング
サンダーを掛けづらい部分に手でやすりを掛けます。無理にサンダーで擦ると必要以上に丸みが出てしまい、かえってカッコ悪くなってしまうかも。
手作業と電動をうまく組み合わせて、イメージ通りに仕上げましょう!
ステイン塗装
塗装をします。自分の愛用塗料はニッペの「WOOD LOVEオイルステイン(ウォルナット)」です。
オイルステインの特長は、美しい木目が生かされることと、塗りムラなく塗れること。そして何より、アンティークな風合いを出せることです。真鍮と組み合わせるだけで、スチームパンクの香りが漂います。
油性塗料を使う時のコツ
油性なので、ニオイがする、薄めるときは薄め液を使う、ハケも直接洗えない…。などなど、使い慣れるまで不便な点も多いかと思います。しかし、それを差し置いてもオイルステインは味わい深い塗料です。渋い色合いがお好みの方はぜひ一度お試しください。
具体的な塗装方法としては、缶から直接取ったステインをハケで塗り、手早く布で拭き取ります。それだけ。
また、油性塗料を使うときは換気を忘れずに!
寒い時期に横着して締め切った部屋で作業してしまうと高確率で気持ち悪くなりますので要注意ですよ(;”∀”)
好みによりますが、自分はあまり深い色にはしたくないので、ステインを塗ったらすぐに拭き取りをします。ここで1分ほど置く人もいますね。少し力を込めて拭いていくと、オイルが揮発して乾き、摩擦が軽く感じます。そこまで拭いたらOKです。
横着せず、すぐに拭き取れる範囲で塗り進めていきます。広い面などは、なるべく分けず、手早く一気に塗った方がいいです。
ステイン塗装が完了したら、ステインは乾くまで1時間ほどかかるので、風通しのよい場所に置いて休憩タイムです(*^^*)
仕上げのワックス塗り
仕上げのワックス塗りに移ります。使用塗材は、ターナーの「蜜蝋ワックス」です。ターナーさん、お世話になっております。
ワックス塗りの前後で、質感はグンと変わってきます!
ワックス塗りには靴用ブラシを使っています。磨きも兼ねて、不便はありません。夏はデロデロに溶け、冬は硬く扱いにくいワックス。硬めのブラシで薄く延ばして擦っていくのがベターです。
ここでも布拭きの作業が入ります。
先ほどと同じように、だんだん手触りが軽くなり、油膜の存在を感じられるようになるまで丁寧に拭き上げます。ちなみにこの布は、実家の父の肌着をもらってきました(笑)。市販のウエスでも、着られなくなった服でも、何でも結構です。
表面が鈍く光るのを見ると、達成感があります。テンションも上がりますね。
丁番つけ
今回は「木部編」ということで、ひとまず丁番つけまでして終了とします。
使用するのは100円ショップの飾り丁番です。アンティーク加工が施されていて、そのまま使えます。丁番つけの手順としては、本体のと蓋それぞれの「表」を決めたあと、本体の方から丁番の位置を決めていきます。丁番がズレてしまうとカッコ悪くなりますので、ここは慎重に!
本体が薄い板の場合は、割れを防ぐために細いビスを使います。ちなみに、インパクトは通常より一回り細い、1番のビットをつけています。
丁番の厚みを測って、蓋側を掘っていきます。オプション作業なので、面倒なら丁番を外(垂直方向)につければOKです。油性ペンで線を引きます(実を言うと、この段階になってから「塗装前にやるべきだったのでは…?」と気付いてしまいました)。
クラフト作業は不測の事態の連続です。
思った通りにいかなくても、そこが味になったりしますから、ひとまず進めていきましょう!
実家から引っ張り出してきた小学校時代の彫刻刀を使います。とても久しぶりでドキドキ。無事に溝が彫れたところで最後の丁番つけです。
予め、手芸用の目打ちなどで目印をつけておきます。軽くでも溝をつければ、ビスの打ちミスがぐんと減りますよ。
ここでは丁番に付属していたミニビスを使います。かなり小さいので、ねじ込み過ぎるとすぐにナメてしまいます。そういう場合は、お手持ちの接着剤でつけてしまうのもアリです。インパクトの力加減は慣れがモノを言います。
木部完成!
スチームパンク木製宝箱の「木部」が完成しました!
次は真鍮金具を作っていきます。スチームパンククラフトに欠かせない腐食(エッチング)の作業に入りますので、ぜひ続けてご覧くださいませ。

作業解説動画
一連の作業解説動画をYouTubeにアップしています。こちらもぜひご覧ください♩
チャンネル登録と高評価ボタンで応援していただけると今後の創作活動の励みになりますので何卒よろしくお願い致します!!(=゚ω゚)ノ☆
あとがき
工具は大変危険なものです。ほんの少しの油断や注意不足から、思わぬ怪我に繋がります。どうぞ皆様もお気を付けくださいませ。適宜、休憩をとることをお忘れなく!
上記の写真は秘蔵のおやつコレクションです(笑)。休憩を楽しむ宝石たちです。
それでは、旅の幸運を……!